マウスピースで顎関節症が治らない理由|噛みしめが起きる場所は口の中ではありません

歯科で「噛みしめが強いですね」と言われ、ナイトガード(マウスピース)を作った。それでも顎の痛みも、朝の顎のだるさも変わらない。

この状態でご相談に来られる方が、当院にはよくいらっしゃいます。マウスピースが効かないのは、それが悪い装置だからではありません。役割が別のところにあるからです。

顎関節症でマウスピースが効かないときの見直しの順番。1番目は睡眠といびき・無呼吸の確認、2番目は日中の歯列接触癖、3番目は頭の位置、4番目がマウスピース。
1〜3を放置したまま、4だけに期待しないことです

マウスピースは「守る」装置です

ナイトガードの役割は、上下の歯のあいだにクッションを入れて、噛みしめによる力から歯と関節を守ることです。

歯のすり減り、被せ物の破損、歯の割れ。こうしたダメージを防ぐという意味で、非常に重要な装置です。実際、歯を守るという目的では確かな役割を果たします。

ただし、噛みしめる力そのものを消してくれるわけではありません。 クッションを挟んでいても、顎の筋は同じように働いています。ですから、筋の疲労や関節への負担が中心にある方では、装着していても症状が残ることがあります。

守るための装置に、原因を取り除く役割まで期待してしまうと、「効かない」という感想になります。

では、噛みしめはどこで起きているのか

噛みしめる指令を出しているのは、口の中ではありません。ここを押さえておくと、次にやることが見えてきます。

1. 睡眠の質

睡眠中の噛みしめは、眠りが浅くなるタイミングで起こりやすいことが知られています。

つまり、眠りが安定していない人ほど噛みしめの回数が増えます。寝つきが悪い、途中で目が覚める、朝すっきりしない。こうした状態が続いているなら、そちらを整えるほうが近道になることがあります。

なお、いびきが大きい、呼吸が止まっていると言われたという方は、睡眠時無呼吸症候群の可能性があります。気道が狭くなったときに顎を動かして気道を確保しようとする反応が、噛みしめとして現れることがあると考えられています。この場合は呼吸器内科・耳鼻咽喉科・睡眠外来での確認が必要です。マウスピースを何個作っても解決しません。

2. 日中の食いしばり(歯列接触癖)

夜の噛みしめばかりが注目されますが、日中の接触も見逃せません。

本来、リラックスしているとき上下の歯は触れていません。ところが、パソコン作業中や集中しているとき、無意識に軽く接触させ続けている方が多くいます。強く噛んでいなくても、接触が続けば筋は働き続けます。

ナイトガードは夜しか入れません。日中の8時間に起きていることには、何も作用しません。

3. 頭の位置

これが当院でいちばん重視している点です。

下顎は、頭蓋骨からぶら下がっている骨です。頭が前に出た姿勢になると、下顎は重力で後ろ下方に引かれます。この位置を保つために、顎を閉じる筋が常に働き続けることになります。

つまり、頭が前に出ている限り、顎の筋は休む時間を与えられません。これは口の中の問題ではなく、首から上の位置の問題です。

デスクワークやスマートフォンで頭が前に出ている方は、顎の筋が一日中働かされている状態にあります。ここが変わらないまま夜だけクッションを挟んでも、限界があるということです。

見直す順番

1. 睡眠(いびき・無呼吸の確認を含む)2. 日中の歯列接触癖(気づいたら顎の力を抜く)3. 頭の位置(モニターの高さ、スマートフォンを見る高さ)4. マウスピース(歯と関節を守る)

マウスピースを外すという話ではありません。順番として、1〜3を放置したまま4だけに期待しない、ということです。

こんなときは歯科口腔外科へ

  • 口が指2本分(およそ3センチ)開かない
  • 顎が外れて閉じられない
  • 顎が急に腫れた、発熱がある
  • 噛み合わせが急に変わった

当院での考え方

当院では、顎まわりの筋(咬筋・側頭筋)と同時に、首の前側、後頭部、そして背中の状態を診ます。頭が前に出る条件を変えないと、顎だけを緩めても戻るためです。

「顎が痛いのに、なぜ背中を触るんですか」と聞かれることがありますが、下顎をぶら下げている土台がそこにあるからです。

なお、噛み合わせの調整や歯の治療は歯科の領域です。当院では扱いません。歯科での治療と並行して、筋と姿勢の側からできることをご提案しています。顎関節症で避けたい習慣については顎関節症でやってはいけないこともご覧ください。

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荻窪あんさんぶる治療院より

マウスピースを作り直す前に、顎以外を見てみるという選択肢があります。

荻窪駅から徒歩4分、土日祝日も診療しています。ご予約・ご相談はこちらから、お電話は 050-5577-0244 へどうぞ。

この記事を書いた人

古田諭志(荻窪あんさんぶる治療院 院長/鍼灸師)

東洋鍼灸専門学校を卒業後、ネパールでの鍼灸ボランティアを経て、2011年1月に杉並区南荻窪で開業。これまでの施術数はのべ約30,000名(2019年12月時点)。中医学の専門誌『中医臨床』に症例検討を複数回寄稿しています。院長紹介はこちら

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