本屋さんやインターネットで調べるとたくさんツボを押して◯◯改善!
そういう内容の記事を良く見かけます。
ツボを押しても効果がありません。はりきゅうも効果は無いのですか?
質問に対する答えですが、
効果はほとんど無いです。
あっ!言い切りました!
なぜならば、ツボはある一定の条件が整ったとき、「はじめてツボの効果を発揮」します。
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ツボはなんでも押せば良い!そんな簡単なものではありません。
鍼灸師としての意見です。
例えば、
医学古典の下痢に関係する一文です。(もっともっとたくさーん古典はあります。)
データ
鍼灸資生経・第三
全七巻
著者:王執中撰
時代:12世紀末成
- 神闕は下痢を止める
- 天枢は冬に寒を度々うけたことによる下痢、臍の辺りの痛み、胃腸の間を動く切痛を主治。
- 心腹痛のあと下痢をすれば、それは寒気が腸の間に宿ったもので、関元に灸を百壮すえる。
神応経・腸痔大便門
全1巻
著者:劉瑾編
時代:1425年刊
- 暴泄は隠白
鍼灸大成・巻九
全10巻
著者:靳賢撰
時代:1601年刊
- 大便の下痢が止まらなければ、中脘、天枢、中極
下痢に関するツボを医学古典からピックアップすると
神闕(しんけつ):へその中央
天枢(てんすう):へその中心にある神闕の両脇二寸にある
関元(かんげん):へその下3寸
隠白(いんぱく):足の第1指内側爪甲根部、爪甲の角を去ること1分
中脘(ちゅうかん):神闕穴の上4寸にある
中極(ちゅうきょく):恥骨の上1寸
ざっと6箇所のツボが出てきました。
医学古典はもっとたくさんあるのでこれだけではすみません。
ツボだけでも足三里、梁丘、大腸兪・・・。
文献名 | 巻数 | 著者 | 成立年もしくは刊行 |
黄帝内経素問 | 24巻 | 後漢中期ごろ | |
黄帝内経霊枢 | 24巻 | 後漢初期ごろ | |
黄帝八十一難経 | 2巻 | 後漢末期ごろ | |
王叔和脈経 | 10巻 | 王叔和撰 | 252年 |
黄帝三部鍼灸甲乙経 | 12巻 | 皇甫謐撰 | 280年ごろ |
肘後備急方 | 8巻 | 葛洪撰 | 4世紀初 |
備急千金要方 | 30巻 | 孫思邈撰 | 630年ごろ |
黄帝内経太素 | 30巻 | 楊上善撰注 | 650年ごろ |
黄帝内経明堂 | 13巻 | 楊上善撰注 | 650年ごろ |
千金翼方 | 30巻 | 孫思邈撰 | 680年ごろ |
外台秘要方 | 40巻 | 王燾撰 | 752年 |
黄帝内経素問次註 | 24巻 | 王冰次注 | 762年ごろ成 |
医心方 | 30巻 | 丹波康頼撰 | 984年成 |
太平聖恵方 | 100巻 | 王懐隠撰 | 992年刊 |
銅人腧穴鍼灸図経 | 3巻 | 王惟一撰 | 1026年成 |
政和聖済総録 | 200巻 | 徽宗皇帝勅撰 | 1118年成 |
鍼灸資生経 | 7巻 | 王執中撰 | 12世紀末成 |
扁鵲心書 | 竇材 | 南宋 | |
素問遺篇 | 10世紀末ごろ | ||
西方子明堂灸経 | 8巻 | 西方子撰 | 12世紀末成 |
備急灸法 | 聞人耆年 | 1226年 | |
黄帝明堂灸経 | 不分巻 | 1312年刊 | |
子午流注鍼経 | 不分巻 | 閻明広撰注 | 1153年成 |
鍼経指南 | 不分巻 | 竇黙原作 | 1311年刊 |
潔古雲岐鍼法 | 杜思敬輯 | ||
鍼灸摘英集 | 杜思敬輯 | ||
鍼経節要 | 杜思敬輯 | 1315年 | |
灸膏肓腧穴法 | 1巻 | 荘綽 | 1312年刊 |
扁鵲神応鍼灸玉龍経 | 1巻 | 王国瑞撰 | 13世紀末 |
十四経発揮 | 3巻 | 滑寿撰 | 1341年成 |
医経小学 | 劉純 | 1388年 | |
神応経 | 1巻 | 劉瑾編 | 1425年刊 |
普濟方‧鍼灸 | 朱梓 | 1403~1424年 | |
奇効良方 | 董宿 | 1473年 | |
徐氏鍼灸捷法大全 | 6巻 | 徐鳳撰 | 16世紀初刊 |
鍼灸節要聚英 | 7巻 | 高武撰 | 1537年刊 |
古今医統大全 | 100巻 | 徐春甫撰 | 1564年ころ刊 |
医学綱目 | 40巻 | 楼英撰 | 1396年成、1565年刊 |
鍼灸集書 | 2巻 | 楊珣 | 1502~1521年間 |
鍼灸指南集 | 不分巻1冊 | 作者不詳 | 江戸前期ごろ |
医学入門 | 7巻 | 李梴撰 | 1571年成、1580年刊 |
鍼灸大成 | 10巻 | 靳賢撰 | 1601年刊 |
黄帝内経霊枢註証発微 | 9巻 | 馬蒔撰注 | 1588年刊 |
東医宝鑑 | 23巻 | 許浚撰 | 1611年成 |
鍼方六集 | 6巻 | 呉崑撰 | 1618 年刊 |
循経考穴編 | 厳振撰 | 17世紀末成 | |
張氏類経 | 32巻 | 張介賓撰注 | 1624年刊 |
類経図翼 | 11巻 | 張介賓撰 | 1624年成 |
十四経絡発揮鈔 | 10巻9冊 | 谷村玄仙著 | 1661年刊 |
選鍼三要集 | 不分巻1冊 | 杉山和一撰 | 17世紀末成 |
療治之大概集 | 不分巻1冊 | 杉山和一撰 | 17世紀末成 |
鍼灸抜粋 | 3巻5冊 | 著者未詳 | 1676年刊 |
鍼道秘訣集 | 2巻 | 著者未詳 | 1685年 |
鍼灸要法 | 6巻 | 岩田利斎撰 | 1686年刊 |
臓腑経絡詳解 | 5巻付録1巻 | 岡本一抱撰 | 1690年刊 |
鍼灸枢要 | 20巻 | 山本玄通撰 | 1676年刊 |
鍼灸秘萃 | 全3巻 | 和田養安 | 1692年 |
十四経絡発揮和解 | 6巻 | 岡本一抱 | 1693年刊 |
経穴機要 | 不分巻1冊 | 著者不祥 | 17世紀末成、1695刊 |
鍼灸抜萃大成 | 3巻7冊 | 岡本一抱 | 1699年成 |
医学至要鈔 | 2巻 | 岡本一抱 | 1699年刊 |
経脈図説 | 4巻7冊 | 夏井透玄 | 1688年成 |
和漢三才図会 | 105巻 | 寺島良安撰 | 1713年刊 |
経穴密語集 | 3巻 | 岡本一抱 | 1715年刊 |
鍼灸重宝記 | 不分巻1冊 | 本郷正豊 | 1718年 |
兪穴弁解 | 2巻 | 村上宗占撰 | 1742年成 |
御纂医宗金鑑 | 90巻 | 呉謙等編 | 1742年刊 |
経絡発明 | 不分巻1冊 | 菊池玄蔵撰 | 1753年刊 |
挨穴捷径 | 不分巻 | 杉原養倫撰 | 1761年刊 |
腧穴折衷 | 2巻1冊 | 安井元越撰 | 1764年 |
鍼灸則 | 不分巻1冊 | 菅沼周桂 | 1767年刊 |
鍼灸極秘伝 | 不分巻1冊 | 木村太沖 | 1780年 |
経脈図攷 | 4巻 | 陳恵疇撰 | 1838年成書 |
兪穴捷径 | 不分巻 | 小坂元祐撰 | 1793年刊 |
経穴彙解 | 8巻 | 原南陽撰 | 1803年成 |
鍼灸逢源 | 6巻 | 李学川撰 | 1817年成、1822年刊 |
経穴指掌 | 2巻1冊 | 高田玄達 | 1807年刊 |
十四経発揮箋註 | 3巻2冊 | 衡山幸珉撰 | 1806年刊 |
経穴籑要 | 5巻 | 小阪元祐 | 1810年刊 |
鍼灸説約 | 不分巻1冊 | 石坂宗哲撰 | 1812年刊 |
隧穴啓蒙 | 梯謙子益 | 1831年 | |
困学穴法 | 全1冊 | 石塚汶上撰 | 1835年刊 |
鍼灸指掌 | 不分巻 | 今村了庵 | 1864年刊 |
勉学堂鍼灸集成 | 4巻 | 編者不祥 | 18世紀末 |
黄帝明堂経輯校 | 1冊 | 黄龍祥輯校 | 1988年刊 |
経穴調査委員報告書 | 1冊 | 文部省 | 1918年 |
ttp://point.umin.jp/siryo/webtext/index.htm
しかもお灸だったり鍼だったりで取穴も違ってきます。
だから効果を出すのも簡単ではありません。
では、なぜ世の中にたくさん◯◯の症状には◯◯のツボって書いてあるのでしょうか?
そういう書籍はほとんど専門家向けの書籍を扱っていない。一般誌が多い。
鍼灸や漢方などの専門家向けの出版社がもしこういう「◯◯にはここのツボが良い」と書いた書籍を発売したら大炎上するかもしれません。
http://www.idononippon.com/magazine/
http://www.chuui.co.jp/chuui/index.php
中医臨床はわたしも何度か症例検討で掲載されました。
鍼灸師が症状に対して使用するツボを選択する手順
四診合算(ししんがっさん)と言って、(見る・聞く・問う・触る)の4つのテクニックを利用して診断します。
そして得られたデータを弁証論治(べんしょうろんち)と言って、矛盾が無いようにデータ処理をします。
こういう東洋医学独特のフィルターを通してツボを選択します。
こういうことから、一般の方が単純にツボを押して改善する確率は低くなります。
継続的に押しても使用するツボが間違っていたら、ほとんど効果ナシです。
症状に合うツボを適切に取穴して、適切な刺激量をツボに与えなければいけません。
けっこう大変でしょ?
通院している鍼灸院や鍼灸師の知人がいるなら、四診合算をしてもらって適切なツボを聞くと良いでしょう。
そしたらきっとツボ押しの効果はぐっと高くなります。
結論
ツボを押して症状改善!!的な書籍に書いてあるツボを押してもほとんど効果はありません。
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