腰はどこ

腰はどこ? と聞かれると「腹巻きをつけるあたり」です。と答えています。

患者様に腰ってどこ? そう聞くと患者様からさまざまな答えが返ってきます。腰が痛いと言っているのに背中だったり、お尻だったりするかたもいます。

英語だと腰痛はLowBackPain(ローバックペイン)と言います。背中の下のほうです。

解剖学では

第12胸椎(だいたいおへその裏側あたり)までが背中
その下を第1腰椎と言って、ここからが腰

腰のはじめはわかりましたが、腰の終わりもハッキリしません。

お尻を腰に含めるか? ここも問題です。

腰骨には仙骨を含めるのが通常です。

「腰掛ける」と言う動作がありますよね。しかし、実際にはお尻で座っています。そうなるとお尻も腰の位置と考えてもよいのかもしれません。

背骨の構造

背骨の骨の数ですが、

  • 頚椎7個
  • 胸椎12個
  • 腰椎5個
  • 仙骨1個
  • 尾骨1個

背骨の数の合計26個が標準です。腰椎は通常5個です。しかし、6個ある人も1割位いると報告されています。そして、とても珍しいのですが腰椎が4個の人もいます。

※頚椎+胸椎+腰椎、合計24個だけで背骨とカウントする場合もあります。

ちなみに、僕には頚椎が8個ある友人がいます。

腰の構造

胴体に占める腰の骨の位置や大きさを想像したことありますか?

  • お腹側の部分は、内臓がほとんど
  • 背骨は、背中側の皮膚の近くで背筋と一緒に体を支えている

腰の構造ってこんなイメージありませんか?

じつは腰の構造は、個人差や、腰のどの高さでの断面かによっても変わってきます。

腰の骨(腰椎)は意外に大きく、胴体のほぼ中央までを占めています。腰はまさに体の大黒柱。

腰という漢字を見ると、月要=左側の月(にくづき)は体を表し、右側の要はかなめです。

腰は体の要ということです。

ほかにも、扇子の根本の留め具を要といいます。それが取れると扇子はバラバラに壊れてしまいます。人間の体も腰が悪くなると立てないし、動けないし、歩けない。

それだけ腰は上半身と下半身をつなぐ、身体の重要な部分なのです。

腰椎は胴体の後ろ半分を占領しています。いわば上半身と下半身をつなぐ大きなジョイントのようなもので、それがあるおかげで体を曲げる、伸ばす、ひねるなどの動作を可能としているのです。

腰椎(ようつい)とは?

腰椎とは、一般的にいう腰骨のこと。腰の部分にある背骨です。

腰椎は5個あり、間を椎間板(ついかんばん)というクッションが挟まっています。

腰椎の中には、脊柱管という神経が通るための穴があります。

神経はムカデのようになっており、

ムカデに例えると

  • 胴体が硬膜嚢(こうまくのう)
  • 足が神経根になります。

椎間板が原因で足がしびれる場合を椎間板ヘルニア。

脊柱管が原因で足がしびれる場合を脊柱管狭窄症。

と呼びます。

どうして腰が痛くなる?

どうして腰が痛くなる? 思い当たる原因がないというかたは、たくさんいます。しかし、原因は大きくわけてふたつあります。

  • 遺伝的な素因
  • 生活環境

直接の原因として、姿勢が悪いとか、腰の使いかたが悪いと腰痛が起こってきます。

1番の原因を出すなら、筋肉のパフォーマンス低下が原因です。

とくに、大腰筋(だいようきん)や腸腰筋(ちょうようきん)と呼ばれる筋肉のパフォーマンス低下が原因です。

※腸腰筋(大腰筋と腸骨筋:ちょうこつきんを合わせての名称)

  • 筋肉量の低下
  • 筋肉はあるけど使いすぎ

ほぼどちらか、または両方が原因になります。

筋肉量の低下

デスクワークやインドア派で運動しない。加齢による筋肉量の低下が考えられます。

筋肉はあるけど使いすぎ

普段運動しないのに、急にスクワットをやった。登山をした。ヒールで歩きすぎた。無理な体制で腰に負担をかけた。

臨床を14,15年おこなっていると、来院患者の7割8割は腰痛です。

犬の腰痛の原因は?なぜ4足歩行でも腰痛になるのか?

人間は、4本足の動物から、2本足で歩く人間に進化した時から腰痛がはじまったとされています。

私自身もそう思っています。

しかし、犬でも腰痛や椎間板ヘルニアになります。

では、4足歩行の犬でも腰痛や椎間板ヘルニアになるのはなぜでしょうか?

  • フローリングなど足腰に負担のかかる環境
  • ご主人様を見上げたり、後ろ足で立ったりするため背骨や背筋への負担
  • 運動不足や加齢による筋肉量の低下
  • 犬種による違い(コーギーやダックスフンド、ビーグル、フレンチブルドック、トイプードル)

動物病院と提携して3年ほど動物の治療も間近でみてきましたが、胴長タイプは構造的にみても腰痛になりやすいです。

さきにあげた4つを人間に当てはめてみましょう。

  1. スケートリンクのようにツルツル滑る環境にいれば足腰はパンパン
  2. 毎日背筋を使ってよい姿勢にしてすごす。背中や腰はパンパン
  3. 運動不足:犬なら事あるごとに抱っこで移動。人なら車で移動
  4. 犬種による違い。人なら腰痛になりやすい遺伝的な素因

腰痛の人は圧倒的に多い

厚生労働省の国民生活基礎調査の結果をみると、腰が痛くて困っている人は、

  • 男性では腰痛が1位で、肩こりが2位
  • 女性では肩こりが1位で、腰痛が2位

ここ10年以上不動の順位です。

腰痛に関してみると男性比率が若干多いです。男女を平均するとおよそ10人に1人は腰痛です。

腰痛の種類13疾患

腰が痛くなる病気はたくさんあります。代表的な疾患を紹介します。

腰椎椎間板ヘルニア

腰が痛くなるもっとも有名な疾患。

10代20代と若者に多い腰の痛みです。もちろん高齢者でも発症することがあります。

腰部脊柱管狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう)

ヘルニアとは逆に、高齢者に多い腰の痛みの原因です。家族性(遺伝的)の要因が強い。、腰が悪い人だと、30代から発症する人もいます。

腰椎分離症(ようついぶんりしょう)

腰痛症(筋・筋膜性、椎間関節性、椎間板性)

治療院で日ごろよく見かける腰の痛みの原因です。筋・筋膜性とは、ざっくり言うと筋肉の状態です。骨に異常のない慢性的な腰痛は、筋・筋膜性の可能性が高いです。

筋・筋膜性・椎間関節性・椎間板性、どれもギックリ腰と呼ばれる場合に考えられます。

変形性腰痛症、変形性脊椎症

仙腸関節腰痛、仙腸関節不安定性

骨盤の後ろ側にあるのが仙腸関節です。「骨盤が歪む」と整体師がよく言っていますが、おそらく仙腸関節を指しているのでしょう。若干は動く関節です。

ただ、私もそうですが、お医者さんも骨盤が歪むと思っている人はひとりもいないです。筋肉の状態によって、関節を引っ張り動きの制限になっているだけです。

化膿性脊椎炎

心因性腰痛

おもにストレスフルな生活を続けていくと、出てくるのが心が原因による腰痛です。痛みを感じるのは脳なので、心が原因で腰が痛くなっても不思議ではありません。

当院の場合、バランス検査をすると心因性腰痛でも「このバランスなら痛くなりますね」とわかります。

バランスをみても異常がない、内臓も異常がない。そんなかたはお断りする場合があります。

腰椎すべり症

スポーツをハードにやっている人に多いのですが、骨の1部分が剥がれてしまい腰の痛みになってしまいます。

腰椎椎体骨折(圧迫骨折)

高齢者が尻もちをつく。ちょっとした負担によって腰の骨が折れてしまいます。場所によっては痛みも少なく折れていると気が付かないかたもいます。

腰椎変性側湾症

腰部の腫瘍(骨腫瘍、神経腫瘍)

ガンが転移してできる腫瘍です。治療院では絶対に施術できない腰の痛みです。一過性の疼痛緩和なら可能です。

内臓から来る腰痛

一般的に安静にしていても腰の痛みが変わらない場合、内臓からと疑います。あまり多くはないのですが、治療院に通う前に病院で検査する必要があります。

内臓性の腰痛でも一過性で痛みを軽減することは可能です。しかし、原因にアプローチすることはできないので早期発見のチャンスを逃すことになるかもしれません。

腰痛を予防するために

腰痛を予防はないですか? とよく患者さんに聞いてきます。

いくつかの予防法があります。1番簡単な方法として、生活習慣を確認して腰痛の予防につなげることです。

正しい姿勢を心がける

中腰や前かがみなど不自然な姿勢腰痛になりやすいので気をつけます。

立ちっぱなし、座りっぱなしなど、同じ姿勢を長時間取らないようにする

長時間の同じ姿勢は立つ・座る・寝る。どの姿勢でも腰痛になってしまいます。

ものを持ち上げるときの姿勢に注意

重さに関係なく、しっかりかがむことが大切です。

女性で腰痛の人はハイヒールに気をつける

腰に負担がかかるので、ハイヒールの長時間着用はできるだけ避ける。

適度な運動をこまめにおこなう

体動かす習慣を作る。同じ姿勢でいないことが大切です。

体感の筋力を強化

姿勢を安定させる筋肉(大腰筋、腹横筋、お尻近くの筋肉を強化しましょう)

柔軟性をつける(特に太ももの裏側にあるハムストリングス)

筋力のない人が、腰を急にひねる、激しく動かすのは危険です。ストレッチや適度な運動で筋肉をしっかり動かすことが必要です。

全身運動として有酸素運動を行う

ウォーキングと散歩は違います。

  • 散歩は景色を見ながらゆっくり歩くこと。気分転換になっても運動とは呼べません。
  • ウォーキングとは心拍数が上がる位の早歩きのことです。

バランスの良い食事を心がける

腰痛に直接的に効く食べものはありません。しかし、筋肉の疲労をとるために、クエン酸(酸味のもの)や、骨粗しょう症など腰痛の原因となる病気の予防として、カルシウム。その他にビタミンB群などもよいでしょう。

禁煙する

ニコチンは椎間板に悪影響を及ぼすことが確認されています。さらにタバコはビタミンCを壊したり、呼吸器疾患へのリスクがあがります。

ストレスをためない

昔、NHKの人気番組『ためしてガッテン』で腰痛についてやっていました。原因不明の腰痛は「ストレスが原因だった!」と放送していました。
信じる信じないは別として、ストレスはいろいろな悪影響を及ぼします。

骨粗相症にならないように気をつける

カルシウムの摂取は、ご年配のかただけではありません。十分なカルシウムの摂取と適度な運動、1日30分以上の日光浴(ビタミンDを作る)は老若男女問わずやってほしい予防法です。

腰痛になりやすい職業

腰痛をおこしやすい職業は、長時間の同じ姿勢になるお仕事です。立ち仕事、座り仕事など動かないと筋肉が固まるので腰痛だけじゃなく、肩こりにもなりやすいです。

  • 警備員
  • 美容師・理容師
  • 工場労働者
  • 事務職・パソコン作業
  • 運転手(タクシードライバー・トラックやバスの運転手)
  • 教師
  • 前かがみになることが多い職業
  • 司会・アナウンサー
  • 看護師
  • 介護士
  • 運送業(重いものをもつ人・引っ越し屋さん)
  • 保育士・幼稚園教諭
  • 農業

腰痛予防は、とにかく普段しない動きをおこなう意識が大切です。

腰痛の人は重いものを持ってはいけないのか?

そもそも「何キロ以上の荷物は腰痛になる」といった定義はありません。だから、1キロであろうと5キロであろうがぎっくり腰や腰痛になってしまいます。

腰痛になるならないは、個人の筋肉の状態(筋力・筋肉の柔軟性)が関係します。

ぎっくり腰の痛みは治療しなくても、安静にしていれば落ち着きます。しかし、痛くなるのが怖く、何もしなければどんどん腰を痛めやすい体になってしまいます。少しずつでもならしていって、健康体の「何でも持てる体」になるのがベストです。

当然ですが、ぎっくり腰で腰を痛めたその日に、重いものは持てません。しかし、しばらく休めばいつものように重いものも持てるようになります。

腰をそらすと何となく痛いとか、曲げると痛いなどといった症状が3ヶ月以上続く慢性腰痛の人は、適度な運動によって、体を動かすことが治療として効果が高いと証明しています。

いきなり重いものを持つのは誰でも無理です。しかし、少しずつ運動などにより、負荷を増やして何でも持てる体を目指しましょう。

歳をとると腰痛を起こしやすい

歳だから腰痛になるとは限りません。

いかに腰を支える体幹の筋肉をベストコンディションでキープできるかで変わってきます。

大腰筋・腸腰筋という筋肉の状態がキモになります。

歳をとると背骨が変形してくるし、骨粗しょう症までならなくても、骨の強さは弱くなります。そのため「歳をとると若い頃に比べて腰痛が出てくるのは仕方ない」と思いがちです。

脊柱菅狭窄症や変形性腰椎症などは年齢が高いほうがなりやすいです。

しかし、腰が痛いということだけなら年齢による違いはありません。若年層はスポーツや、長時間の座り仕事で腰痛になることが多いです。

 

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