野球肩の治しかた
1.まずは自己判断せず、違和感があれば必ず整形外科(できればMRIがある病院)を受診してください。
整骨院や接骨院、鍼灸院、整体院、カイロプラティックではダメです。
理由は、
- レントゲン・MRIは病院でしか確認できない。
- 柔道整復師(接骨院・整骨院)、鍼灸師(鍼灸院)は国家資格だが、診断権がない。
- 整体院・カイロプラティックは無資格なので論外。
2.安静。
野球肩の場合、使いすぎが大きな原因のひとつです。症状によっては、半年くらいノースローの期間が必要かもしれません。もし、君の夢が「プロ野球選手」なら休む勇気をもってほしい。
3.野球肩の治す基本はアイシングです。練習中や練習後に痛みがあれば肩を冷やす習慣をつけましょう。
症状によっては、手術をすすめられるかもしれません。しかし、疑問点や不安があるときは、セカンドオピニオン(別の病院で診察)で他の医師の説明を聞くとよいでしょう。
アイシングについて
アイシングにはふたつの意味があります。
- 応急処置
- 疲労回復
使用する道具は、
- コールドスプレー
- 氷のう(アイスバック)
- 保冷剤
肩の場合、打撲をしたときなどが応急処置になります。コールドスプレーや氷のうが、つかいやすいでしょう。
一般的にケガをしたときにおこなうアイシングのことをRICE(ライス)処理とよび、
- R:レスト(安静)
- I:アイシング(冷却)
- C:コンプレッション(圧迫)
- E:エレベーション(挙上)
をおこないます。
画像引用:ザムスト
肩の場合、E(挙上)は心臓より高くするので座った状態などになります。
C(圧迫)は氷のうの種類によっては、圧迫できるものがありますが、なければ包帯などで固定しましょう。
疲労回復の場合、軽いストレッチをして、10~15分程度アイシングをおこないます。
アイシングによる疲労回復効果を得られる手順は、
- 10~15分程度のアイシング
- 血管が一時的にちぢむ
- しばらくするとリバウンド効果で血管が広がる
- 血液の流れが勢いよくなる。疲労物質が流れやすくなる
テーピング
紹介するテーピングは、難しい貼りかたではありませんが、ひとりで貼るのは難しいでしょう。
痛みがあるときに、テーピングを貼ってまでのピッチングはおすすめしません。症状が悪化するおそれがあるので、原則的に痛みがあるときは投げないこと。
フォロースルーのときに肩が痛む場合
音声あり
原則として、肩が痛むときは、テーピングしてまで投げないこと。
音声あり
先ほど紹介したテーピングより、簡単に貼れるところがポイントです。
ストレッチ
ケガの予防にはストレッチなどで肩周辺のじゅうなん性が必要です。
ストレッチをおこなうときに守ってほしいことが3つありあす。
- 呼吸は止めない
- 反動をつけておこなわない
- 痛くない程度に伸ばす
- 横向き寝でおこなう場合、枕を用意する
プログラム
- 30秒3セット以上
- 練習後のケアとしておこなう※
※ストレッチはやりすぎると逆に可動域が少なくなる場合があります。
ストレッチは慣れてくれば、立った状態でもできるのでアレンジしてください。
肩のうしろ側のストレッチ
ヒジの位置を肩のライン、顔のラインに変えることで肩の伸びる場所が変わってきます。角度を気にしながらやってみましょう。
肩外旋筋のストレッチ
ヒジを90度曲げた状態から、手のひらをベッドに近づけます。内旋方向に動かすことで、外旋のはたらきをする筋肉をストレッチできます。
じゅうなん性の評価
- 手のひらがつく:やわらかい
- 指先がつく:ふつう
- 指先がつかない:硬い
肩外旋筋のストレッチ2
手の甲を腰にあてて、腕を内旋(内ねじり)していきます。
※動画は、わかりやすいように上半身をねじっています。実際はねじらないように注意してください。
肩内旋筋のストレッチ
わきを閉じて、壁に手を当てて、そのまま体をねじる。
ストレッチしていない側の手でヒジが動かないように固定すると筋肉をしっかりストレッチできます。
再発予防のための投げかた
第1相:ワインドアップ期 | グラブの中にボールを入れて、腕を持ち上げる。ワインドアップポジションで痛む場合、投球禁止。 |
第2相:アーリーコッキング期 | 肩の前に大きな力が働く フォームの悪さ(腰の開きが早い・腕を後ろに引きすぎる)が野球肩の原因のひとつになる。 |
第2相:レイトコッキング期 | 胸を大きく張る(肩の最大外旋)ときで、投げすぎやフォームの悪さで、肩の前の不安定感・関節唇損傷や腱板損傷になりやすい。 |
第3相:アクセラレーション期 | 胸を大きく張ってボールをリリースするまで。 胸を大きく張る(最大外旋)ときに、ヒジが下がっていると、肩関節にアソビができる。アソビがあると、インピンジメント症候群・腱板損傷・関節唇損傷のリスクがあり |
第4相:フォロースルー期 | ボールをリリースして、腕がふりおらされるまで。 肩が投げ終えたあと、引っ張られるため、関節包、腱板、腕の筋肉に負担がかかる。腱板損傷や関節唇損傷・肩の不安定感のリスクあり |
第1相:ワインドアップ期
- 軸足の膝を曲げていないか
- 体の軸が後ろに倒れていないか
第2相:アーリーコッキング期
- ステップしている足と膝は投球方向にむいているか
- 両肩を結ぶラインが骨盤に対して、開いていないか
第2相:レイトコッキング期
- ヒジは両肩を結ぶラインより上にあるか
- ストライドの幅は広すぎたり狭すぎたりしていないか※
※目安(身長×0.85)
第3相:アクセラレーション期
- ゼロポジションの位置で外旋位をキープできているか※
- グラブの引き寄せはできているか
※ゼロポジションとは、
肩甲骨の肩甲棘と上腕骨が平行になった状態。ゼロポジションができていると、
- 肩の外旋可動域がUP
- 回旋筋腱板のバランスがよくなる
第4相:フォロースルー期
ふみこんだ足の上まで上半身の中心点が移動できているか
投げ終えたの前腕(ヒジから下)は回内しているか※
※回内(変化球:シュートを投げた感じ)
野球肩のリハビリ
ピッチングフォームは全身(指先・ヒジ・肩・背中・腰・体幹・股関節・ヒザ・足)をつかった一連の流れによっておこないます。
障害がでているのは肩かもしれませんが、その他の部位の異常によって肩に障害がでている場合がよくあります。そのため、リハビリは肩だけでおこなうのではなく、全身の評価をしながらおこなうことが重要です。
体幹のトレーニング
目的
体幹の強化。ピッチングフォームで軸をしっかりつくる。
音声あり
下半身のトレーニング
目的
足腰や体幹の強化。
方法
足元に専用のクッションか、不安定なやわらかいマットの上に片足で立つ。その状態でボールキャッチなどをおこない体幹がブレないようにする。
肩関節の回旋腱板(ローテーターカフ)のトレーニング
目的
回旋腱板(ローテーターカフ)とよばれる棘上筋・棘下筋・小円筋・肩甲下筋を鍛える。ゴムチューブやゴムバンドを使用する。
痛みがあるときは、筋肉が痛んでいるので無理はしないこと。筋テストとしても応用できる。
棘上筋のトレーニング
- 足を肩幅程度に広げる
- チューブの長さはヒザの位置に調整する。
- チューブのはしっこを手で持ち、反対側の足で踏む
- 体はまっすぐ正面にして、ヒジや手首を曲げないように30度の角度まであげる
- 3秒かけてあげ、3秒かけておろす
- 30回
- 1回3セット
棘下筋のトレーニング
※実際はチューブを柱などに固定しておこなうこと
- チューブを柱などに固定する(地面と水平になるように固定する)
- ヒジを90度に曲げた状態でチューブを持つ。
- 柱からある程度離れる(チューブが伸びる程度の場所)
- 正面を向いて立つ
- 手首が曲がらないように注意
- 90度の角度まで開く
- 3秒かけてあげ、3秒かけておろす
- 30回
- 1回3セット
小円筋のトレーニング
- 机を用意する(胸より下くらいの高さ)
- ヒジを90度曲げて固定する
- 手首が曲がらないようにして、90度ヒジを立てていく
- 3秒かけてあげ、3秒かけておろす
- 30回
- 1回3セット
肩甲下筋のトレーニング
実際はチューブを柱などに固定する。動画の場合右側
動画の場合、腕が開きすぎています。実際は、腕が正面から内側90度までの範囲
- 柱にチューブを固定する(水平になるように、動画なら右側)
- ヒジを90度に曲げた状態でチューブを持つ。
- 柱からある程度離れる(チューブが伸びる程度の場所)
- 正面を向いて立つ
- 手首が曲がらないように注意
- 腕が正面を向いている状態から、90度の角度まで腕を閉じる
- 3秒かけてあげ、3秒かけておろす
- 30回
- 1回3セット
ゴムの硬さの目安
中学生
- -2:タン
- -1:イエロー
高校生・大学生・一般・実業団・プロ
- -1:イエロー
- 0:レッド
画像引用:FZONE SPORTS
まとめ
野球肩は多くの場合、使いすぎが1番の原因です。少しでも異常を感じたらコーチなどに相談して安静にする必要があります。
テーピングを貼って、ごかましならおこなうと。将来野球ができなくなるかもしれません。安静にして痛みが落ち着けば回旋筋腱板のトレーニング。
少しずつ筋力を回復させながら、ピッチングフォームも見直してみましょう。
小学校高学年から中学生くらいの男子に多い、成長期の障害「オスグッド病」ヒザが痛み、曲げ伸ばしが困難になります。
治しかたから予防法まで、すべてまとめました。
https://enshp.com/blog/post-9088/
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画像引用:wikipedia
画像引用:順天堂大医院
画像引用:日本整形外科学会
画像引用:札幌スポーツクリニック
画像引用:ザムスト
画像引用:FZONE SPORTS