胸郭出口症候群の理解と診断
胸郭出口症候群(TOS)は、肩や腕に痛みやしびれを引き起こす状態です。
この症候群は、神経や血管が胸郭の出口近くで圧迫されることによって発生します。
診断は、患者の症状と身体検査に基づいて行われ、しばしば医師と鍼灸師の協力によって行われます。
鍼灸治療が未熟な場合、頸部への刺鍼は困難かもしれませんが、指圧などの代替手法が有効です。また、モーレーテストなどの特定のテストを活用して、症状の特定と治療計画の策定を行います。
胸郭出口症候群の定義と症状
胸郭出口症候群は、手術や物理療法、鍼灸治療などで改善が見込める症状です。
主な症状には、腕や手の痛み、しびれ、筋力低下があります。
これらの症状は、肋骨や鎖骨の異常な位置や姿勢の問題によって引き起こされることが多いです。
日常生活や仕事での特定の動作や姿勢が、これらの症状を悪化させる可能性があります。
鍼灸師は、これらの症状を和らげるために、特定の部位への刺鍼や指圧を行い、患者の日常生活の質の改善を目指します。
参照元:KOMPAS慶應義塾大学病院医療健康情報サイトhttps://kompas.hosp.keio.ac.jp/contents/000944.html
整形外科医と針灸師の診断の違い
胸郭出口症候群の診断において、整形外科医と鍼灸師のアプローチには重要な違いがあります。
整形外科医は主に画像診断や物理的検査に重点を置き、構造的な異常や病理学的な要因を探ります。一方、鍼灸師は患者の症状や体のエネルギーフローに注目し、痛みやしびれの原因を探ります。
参照元:明治国際医療大学鍼灸臨床の現場より第12号胸郭出口症候群の鍼灸治療https://www.meiji-u.ac.jp/secretar/ekimae/web12.htm
正しい診断の重要性
胸郭出口症候群の正確な診断は治療成功の鍵です。
誤診は不適切な治療を招き、患者の苦痛を長引かせる可能性があります。
鍼灸師は、モーレーテストなどの特定の診断テストを用いて、症状の原因を特定し、最適な治療計画を立てることが重要です。また、患者に対して治療プロセスを透明にし、触れることで感じる可能性のある「ゾワー」とした感覚やしびれについて事前に説明することも、患者の不安を和らげる上で重要です。
胸郭出口症候群の分類と特徴
胸郭出口症候群は、その発生原因によっていくつかのタイプに分類されます。
主なものには、
- 頸肋症候群
- 斜角筋症候群
- 肋鎖症候群
- 過外転症候群
があります。
これらの症候群は、肋骨、鎖骨、筋肉、神経、血管などの胸郭構造による圧迫や障害によって引き起こされます。
症状には、痛み、しびれ、握力の低下、動脈や静脈の圧迫による血流の異常などがあります。これらの症状は、日常生活や仕事に影響を及ぼす可能性があり、正確な診断と適切な治療が必要です。
頸肋症候群
頸肋症候群は、異常な肋骨(頸肋)によって神経や血管が圧迫される状態です。
この圧迫は、しびれや痛み、手の感覚の低下、時には腕の血流障害を引き起こすことがあります。
鍼灸治療においては、頸部への刺鍼はリスクが伴うため、慎重なアプローチが求められます
気胸のリスクを避けるため、刺鍼する箇所を指圧する方法が推奨されます。また、モーレーテストなどの診断テストを活用し、患者に触れる際の感覚について事前に説明することが大切です。
斜角筋症候群
斜角筋症候群は、中斜角筋や前斜角筋の過度な緊張により、腕神経叢や関連する血管が圧迫される状態です。
この症候群は、特にデスクワークや長時間の運転など、特定の姿勢を長く続ける仕事をしている人に多く見られます。
- 症状には、
- 肩や腕の痛み
- しびれ感覚の低下
が含まれます。鍼灸治療では、これらの筋肉の緊張を和らげることが重要で、特に鎖骨上部や頸部への刺鍼は慎重に行う必要があります。気胸のリスクを避けるため、指圧を活用することが推奨されます。
肋鎖症候群
肋鎖症候群は、第一肋骨と鎖骨の間の狭い空間にある神経や血管が圧迫されることで発生します。
この圧迫は、しばしば
- 肩や腕への痛み
- しびれ
- 握力の低下
を引き起こします。
鍼灸治療では、これらの症状の改善に向けて、肋骨と鎖骨周辺の筋肉の緊張を緩和することが目標です。しかし、頸部や鎖骨上部への刺鍼は、特に未熟な鍼灸師にとっては難しいかもしれません。
モーレーテストなどの検査を活用し、患者へのアナウンスを忘れずに行うことが大切です。
過外転症候群
過外転症候群は、肩の過度な外転動作によって腕神経叢が圧迫される症状です。
この症候群は、スポーツ選手や重い物を頻繁に持ち上げる仕事をしている人によく見られます。
症状には、
- 腕や手の痛み
- しびれ
- 感覚の低下
があります。鍼灸治療では、関連する筋肉の緊張を和らげ、神経の圧迫を軽減することが目標です。しかし、頸部や鎖骨上部への刺鍼には気をつける必要があり、特に鍼灸治療が未熟な場合は、指圧を用いることが安全です。
参照元:KOMPAS慶應義塾大学病院医療健康情報サイトhttps://kompas.hosp.keio.ac.jp/contents/000944.html
針灸治療の実践とテクニック
胸郭出口症候群の治療において、針灸師としての技術と知識は非常に重要です。
特に、鍼灸治療が未熟な資格取得したての鍼灸師にとっては、正確な診断と安全な治療法の選択が必須です。
頸部や鎖骨上部への刺鍼は、気胸のリスクを伴うため、慎重なアプローチが求められます。
このリスクを避けるために、刺鍼する箇所を指圧する方法が有効です。
私がよく利用する方法は、前斜角筋と中斜角筋の間を指圧する方法を行います。
また、モーレーテストなどの診断テストを活用し、患者さんへの適切なアナウンスを行うことも重要です。
前斜角筋症候群の針灸治療
前斜角筋症候群は、前斜角筋の過緊張により腕神経叢や血管が圧迫される症状です。
この症候群に対する針灸治療では、筋肉の緊張を和らげることが目標です。
治療には、筋肉の緊張を緩和する特定のツボを選択し、患者の症状や体質に合わせた刺鍼法を用います。しかし、頸部や鎖骨上部への刺鍼は特に注意が必要で、未熟な鍼灸師は指圧を用いることが推奨されます。
患者さんに触れる前には、「ゾワー」とした感覚やしびれが強くなる可能性があることを伝え、安心して治療を受けてもらうためのコミュニケーションを大切にしましょう。
過外転症候群の針灸治療
過外転症候群は、肩や腕の過度な外転動作によって生じる胸郭出口症候群の一種です。
この症候群の治療において、鍼灸師は特に慎重なアプローチが求められます。
頸部や鎖骨上部への刺鍼は、気胸のリスクが伴うため、未熟な鍼灸師は特に注意が必要です。
刺鍼する箇所を指圧する方法を活用し、患者さんには刺激による「ゾワー」とした感覚やしびれの可能性について事前に説明することが重要です。また、モーレーテストなどの診断ツールを用いて、治療の効果を評価することも有効です。
追加治療としての頸椎一行からの深刺置針
胸郭出口症候群の治療において、頸椎一行からの深刺置針は、追加治療として有効な手段です。
この治療法は、特に頸部の痛みやしびれ、筋肉の緊張に対して効果的です。しかし、深刺置針は高度な技術を要するため、鍼灸師1年目の方は十分な練習と指導のもとで行うことが推奨されます。
頸部や鎖骨上部への刺鍼はリスクを伴うため、患者さんへの適切な説明と安全な施術が不可欠です。
治療前には、患者さんに施術による感覚の変化について説明し、安心して治療を受けてもらうことが大切です。
参照元:明治国際医療大学鍼灸臨床の現場より第12号胸郭出口症候群の鍼灸治療https://www.meiji-u.ac.jp/secretar/ekimae/web12.htm