西洋医学から診たアトピー性皮膚炎とは?
Q1:アトピー性皮膚炎と言われたのですが?
A1:アトピー性皮膚炎は皮肩の表面にある「角質」と呼ばれる部分が弱く,少しの刺激で角質が乱れる状態です.このような状態は他の皮膚トラブルを招きます.掻きむしるために細菌の感染を生じたり(「とびひ」と呼ばれる病気),単純へルペス(庖疹)などのウイルスが増殖したり,いろいろな塗り薬にかぶれてしまったりなどです。なお,「食物アレルギー」とは異なります.むやみに食事制限は行わないでください。
Q2:角質が乱れただけで何が問題なのですか?
A2:角質は外の刺激から皮膚を守ってくれる大切な「防護服」です.
この「服」が破れると,皮膚はすぐ乾燥するようになります.乾燥した無防備な皮膚は外からの刺激物,異物を通過させてしまいます.皮膚の中にある「異物」を感知する細胞はこのような環境下で異常に活発になり,痒みを生じる物質,ヒスタミンを出してしまいます。それがアトピー性皮膚炎の痒みの原因となります.この痒みで皮膚を引っ掻き,傷つける.そのことで皮膚の角質層がさらに破壊され,ふたたびヒスタミンが出て,さらに痒くなるという悪循環に陥ります.
Q3:知り合いの子どもはきれいな皮膚です.どうして私の子どもだけアトピー性皮膚炎なのでしょう?
A3:ある程度遺伝が関係しています.それに生活環境の変化というものが加わっているようです.根本的な原因はいまひとつわかっていません.ただし,幼児期にアトピー性皮膚炎であっても,小学校高学年程度になると軽快する小児も多いのでご安心ください.
Q4:ではどんな治療ですか?
A4:拝みの強い時は十分な強さのステロイド薬外用を行います。ステロイド外用薬は医師の指示通り使用すれば怖い薬ではありません。むしろステロイド薬外用をしないでどんどん悪化し,いろいろな病気を招くことのほうが怖いのです。同時に保湿剤も使用して,皮膚を常に潤いある状態に保ちます。ある程度良い状態になりましたらステロイド外用薬を軽いレベルにします。また痒みをある程度抑えてくれる内服薬を出す場合もあります。つまり痒みを止める内服薬とステロイド外用、それに保湿剤を組み合わせて治療します。
Q5:お化粧をするなと言われたのですが?
A5:アトピー性皮膚炎だからといって,お化粧を禁止することはありません.
中国医学からみたアトピー性皮膚炎
皮膚は人体の重要な構成部分である。皮膚は全身を覆い,内は臓脈、経絡、気血と密接に関係し,外は周囲の環境と直接,接触していて,内臓を保護し,外邪から防御する重要な作用を担っている。したがって外邪の侵襲を容易に受けやすいだけでなく,また臓脈、気血の機能失調に因っても発病する。つまり,いわゆる「もろもろの内に有る者,必ず諾の外に形す」である。針灸療法は多種の皮膚病に対し,良好な治療効果を持っている。
風邪が肌膚に客した場合,発病は多く急性で,その症状には皮膚の紅斑、丘疹、あるいは膨疹、瘙痒などが見られる。治法は去風止痒で,足太陽膀胱経、足少陽胆経、手陽明大腸経の兪穴を主とし,瀉法で刺針する。風寒に属す場合は,あわせて灸法を加える。
火熱の邪が肌膚に蘊結した場合は,皮膚損傷は多く鮮紅色の斑塊か紫斑を呈し,灼熱感と疼痛が起こる。治法は清熱涼血で,手陽明大腸経および足太陰脾経の輸穴を主とし,瀉法で刺針する。
熱毒が壅遏(ようあつ)して気血が瘀滞し営衛が不和となった場合は,皮膚損傷は多く紅潮、腫脹灼熱疼痛を呈し,重症では化膿する。治法は清熱解毒、涼血散瘀で,督脈足陽明胃経の輸穴を主とし,瀉法で刺針する。同時に三稜針で瀉血し排毒してもよい。
湿熱が肌膚に蘊結している場合は,皮膚の紅斑、水痘、滲出液、びらんなどの症状が見られる。治法は清熱除湿で,手足の陽明経および足太陰脾経の輸穴を
主とし,瀉法で刺針する。湿が強く熱が軽い場合は,あわせて灸を加える。
経絡が阻あつし気血が凝滞して起こる皮膚病では,皮膚の瘀斑、白斑あるいは色素沈着、結節あるいは苔蘇様の変化、慢性潰瘍などの症状が見られる。治法は活血化瘀、軟堅散結で,皮膚損傷の局部と皮膚損傷が波及している関連経絡の輸穴および隔兪、血海などの理血の要穴を取り,瀉法で刺針し,あわせて灸を加える。
血虚風燥あるいは陰き血燥によってひき起こされた皮膚病では,皮膚の乾燥、落屑、肥厚、瘙痒、毛髪が枯れて脱落するなどの症状が見られる。治法は養血潤膚で,関連する「背兪」穴および手足の陽明経の輸穴を主とし,補法で刺針する。
気血不足で起こる皮膚病は,瘡瘍が潰れた後の局部が淡暗色で長く口がふさがらない、淡色の膨疹が繰り返し起こる、あるいは皮膚が乾燥して瘙痒感があるなどである。治法は補気益血で,関連する「背兪」穴および任脈と足陽明胃経の輸穴を主とし,補法で刺針し,あわせて灸を加える。