足の甲のツボや足裏のツボには、セルフケアで体調を整えるのに手軽なパーツですね。
いつでもどこでも、手や棒などでマッサージできるのが魅力です。
- 足ツボって効くの?
- 足ツボって経穴のこと反射区のこと?
- 足ツボで痛いと内臓が悪いって本当?
まだまだ科学的根拠が少ないので、足ツボは効果がないと思われる場合も。
今回は、日々ツボを使用している鍼灸師の立場で、足の甲のツボ・足裏のツボを解説します。
ツボが効く理由
鍼灸治療でもちいるツボ(経穴:けいけつ)は、はるか昔の中国(2000年以上前)で誕生。
あなたも肩が凝ったときや、腰が痛いときに指先でつらいポイントを「ぐー」と押しませんか?
古代中国でも同じでした。いや、ヨーロッパだろうが古代エジプトでも同じでしょう。そして、「肩を押したらスッキリした!」「あれ?なんか腹が痛いのもよくなったかも」※
古代中国のすごいところは、陰陽や五行の理論をもちいて、治療法として確立させたところでしょう。
※実際は、砭石をつかった瀉血だといわれています。
ツボ(経穴)をつかった治療法
鍼灸師は、「経絡:けいらく」を重視します。※一部の鍼灸師は懐疑的で採用しない人もいます。
この経絡と呼ばれるルートは、教科書的には14本あり、その上に経穴(ツボ)があります。※経穴をつないでできたものが、経絡という鍼灸師もいます。
- 経絡=電車の路線
- 経穴=電車の駅
このようなイメージです。
この経絡には、気・血・水が流れており、気血水の過不足のコントロールのために経穴を利用。
経絡は臓腑とつながっており、経穴を刺激して臓腑の調整をおこないます。だから、「足のツボ(経穴)を押したら胃がスッキリした」という現象がおこります。
そして足の甲をはじめ、足にあるツボも全身に作用していきます。
ツボはズレたら効果がない?
患者さんによく聞かれます。「私はツボはズレても効果がありますよ。」とお伝えしています。
なぜなら、2006年にツボが国際統一されました。だとするとツボが誕生して以降、国よってツボの位置が違っていた可能性があります。
それまでは、日本や中国でツボの位置に違いがありました。
人体図などでしめされるツボの位置は、あくまでも「そのあたり」と思ってください。カーナビと同じです。
運転していて「モクテキチ シュウヘン デス アンナイヲ シュウリョウシマス」って、いわれても、「えっどこのこと(汗)」という経験をされたかたも多いはず。
ツボも同じで、最後は指先の感覚や経験値が必要です。
ツボは、「押して気持ちいいところ」「押して痛いところ」という感覚で決めて大丈夫です。
足のツボとリフレクソロジーの違い
画像引用:https://plaza.rakuten.co.jp/gengen/4001/
足の甲をはじめ、足にある「ツボ(経穴)」の話になると、「足ツボマッサージ」をイメージされるかたも多いです。
足ツボマッサージやリフレクソロジーは「反射区:はんしゃく」と呼ばれ、全身の臓器やパーツが反映されたものを採用しています。
鍼灸治療の足のツボは「経穴:けいけつ」よ呼ばれるもの。
鍼灸治療のツボ(経穴)と、足ツボマッサージ・リフレクソロジーのツボ(反射区)は、似て非なるものです。だけど、部位別の効果効能は、だいたい同じようになっています。
人体だから当然ですよね。足ツボマッサージは、足裏の刺激が多い印象です。鍼灸のツボだと足裏にはほとんどありません。
足ツボは効果がないといわれる理由
雑誌やネットの記事をみて、足ツボをやっているのに全然効果がない。
あなたもそんな微妙な体験をしたことありませんか?
残念ながら鍼灸師からしたら当然です。たとえば、「むくみ」に足裏のツボ(反射区)がよいと書いてあるとしましょう。しかし、むくみの原因を鍼灸治療の理論・西洋医学で考えると、
- 肺の失調
- 脾の失調(消化器系)
- 腎の失調
- 腎機能障害
- 甲状腺機能低下
- 深部静脈血栓症
- 心不全
- 肝硬変
- 下肢静脈瘤
- リンパ浮腫
- 月経周期によるホルモンの関係
- 塩分の取り過ぎ
- 血流の低下
- 運動不足
- 飲酒
- 栄養失調
細かくみていくともっとあるでしょう。これだけ原因が違うむくみを足ツボマッサージの場合、症状別で雑誌に掲載されているでしょうか?
私は見たことがありません。
あくまでも足の甲や足裏のツボ刺激は、リフレッシュ目的や健康維持でおこなうものだと考えています。
足の甲や足裏のツボを施術する足ツボマッサージに、国家資格は不要です。だから過度な期待をしないほうがよいでしょう。
鍼灸治療だと診立てをしっかりおこない、足の甲のツボや足首のツボを使用したり、全身のツボを使用してむくみの施術をおこないます。
指で押すだけの足ツボマッサージで、改善されたら職業として成り立ちません。お医者さんもそうですね。
あくまでもラジオ体操のように、健康維持やリフレッシュとして、足ツボがあると思ってください。
足ツボの施術を受けたり、セルフケアをしたりして足ツボの効果がない場合、一度専門医に診てもらうほうがよいでしょう。
専門的な話だと、反応(圧痛など)がないツボに、鍼や灸をしても効果はありません。
足の甲には重要なツボが集まっている
※ツボは両足にあります。
※ツボは両足にあります。
ざっくり足の甲にあるツボ(経穴)を効果効能と一緒に一覧表にしました。
大敦(だいとん) | イライラ、やる気がしないなどのメンタル系 |
隠白(いんぱく) | 食欲不振などの胃腸系 |
大都(だいと) | 食欲不振、胃腸炎などの胃腸系 |
行間(こうかんorぎょうかん) | 目の疲れ、高血圧、頭痛などのメンタル系 |
太衝(たいしょうorだいしょう) | 吐き気、胃痛、過食、下痢などのメンタルや胃腸系 |
厲兌(れいだ) | 食欲不振、歯痛などの胃腸系や顔面部 |
足竅陰(あしきょういん) | 頭痛、耳鳴りなどの側頭部 |
至陰(しいん) | 頻尿、膀胱炎、逆子などの腎臓系、婦人科系 |
内庭(ないてい) | 過食、歯痛などの胃腸系や顔面部 |
足臨泣(あしりんきゅう) | 肩凝り、頭痛、自律神経の乱れなどメンタル系や人体側面 |
専門的になりますが足の甲のツボには、「井穴:せいけつ」「栄穴:えいけつ」と呼ばれる性能をもつものが多いです。
爪の付け根にある「井穴(せいけつ)」は自律神経のバランスをととのえるツボ
引用:天気.jp
滎穴は、経気が溜(脈気が流れるところ)を主り、主治が身熱(体の熱)
引用:Wikipedia
足の甲でも指先に近いツボ井穴・栄穴に該当します。
- 神経過敏なものをクールダウン
- イライラストレスをクールダウン
- 胃腸のムカつき感をクールダウン
下肢を鍼灸治療の理論のひとつで考えた場合、足の甲など指先側は顔面部。膝や股関節などは体幹・お腹周りになっています。
これは、足ツボマッサージ・リフレクソロジーの図でも似ていると思いませんか?
指先ほど顔面部になっていますよね。
足の甲や足裏のツボがストレスに効く理由
足ツボに限らず、マッサージをおこなうと軽く運動したのと同じ爽快感があります。
ちょっとしたストレスだと、家で引きこもるより軽く運動するとストレス解消になりますよね。それと同じで、足の甲や足裏のツボも軽く運動したのと同じになります。さらに、足のツボにはクールダウン(清熱)の効果があるとお伝えしました。
東洋医学には「気」と呼ばれる考えがあります。
- 気が昇るとイライラしたり頭痛がしたり頭に血が上った感じで不眠になる
- 気が滞るとイライラはもちろん、モヤモヤしたりムカムカしたりします
このような状態の場合、気を巡らせたり気を降ろす必要があります。このときに足にあるツボをつかうことが多いので、足の甲や足裏のツボがストレスに効くひとつの理由になるでしょう。
ツボの押しかたと注意点
足の甲をはじめ、足のツボをぐいぐい押さない
とくに注意してほしいのが、人に施術されるのと自分で施術するのだと痛みの感覚がまったく違います。
自分で施術すると、脳が感覚をわかっているので痛みが少ないです。そんなときに棒をつかったり、渾身の力でぐいぐい押したりすると、あとで内出血や痛みの悪化が考えられます。
足の甲のツボはとくに筋肉が少ないので、強すぎる力は足の動きが悪くなる場合もあります。
少し物足りない程度、痛気持ちいい程度にしておきましょう。
体調の変化が大きいときにしない
足の甲や足裏への刺激は、血液の流れや神経に作用します。食前食後すぐや飲酒前後、また妊娠中は注意しましょう。
激しい運動直後に控えたほうがよいことは、足のツボ押しも控えたほうがよいでしょう。
たとえば、足のツボを押すと血行がよくなります。飲酒すれば普段より酔いが早くなります。
足ツボを押すとゴリゴリ痛い理由
体調不良の場合、足ツボを押すともん絶するくらい痛くなります。
痛い箇所はゴリゴリする感じがするでしょう。一般的に老廃物が溜まっているといわれます。※老廃物の定義は一旦置いておきましょう。
足のツボ(経穴)や足裏マッサージ(反射区)で考えても、体の反応として痛くなります。
ざっくりと、
悪い箇所があれば足ツボは痛い
と思ってよいです。
もう少し、解剖学的な話をすると、足を構成する骨の位置異常があれば土踏まずなどのアーチも崩れます。※筋肉の発達によりアーチがないようにみえる人もいます。
そうすると、神経過敏になったり鈍感になったり筋肉への過剰な負担で痛くなります。
これはケガの影響や不良姿勢、機能低下した筋肉により引き起こされます。その結果、神経や血液の循環障害となり、むくみや痛みになります。
足ツボが痛くなるベスト1【土踏まず】
足裏マッサージを受けたり、セルフケアでやっていると土踏まず付近が激痛だったかたも多いでしょう。
経穴の視点でも反射区の視点でも共通して消化器系の症状に該当します。
一般的に「胃腸が疲れている」といわれます。
胃腸に関係する神経の枝が土踏まずあたりにあり、立ちかた(かわいい系の立ちかた)によって土踏まずが潰れたようになると、胃腸系の反射が出ると考えています。
反応があれば痛くなったり、気持ちいい足ツボですが、近年科学的にも根拠がわかってきました。
足ツボの科学的根拠がありました
今までは東洋医学同様、根拠のないニセ医学といわれることが多い足ツボ。
足ツボにも科学的根拠がありました。
東北大学での脳科学を研究している川島隆太氏は、最近の論文で足底の刺激(足ツボ)が脳に刺激を与えることを機能的MRで証明している(Miura N et al, BMC Complemant Altem Med, 2013)
引用:足ツボプリント靴下の開発 多田昌弘医学研究科 整形外科学・病院講師
刺激部位と臓器の関係はドイツ式足裏ゾーンを用いた。一定温度(22℃)の室内に被検者を1時間安静させて後, 指圧刺激を開始した。刺激開始後10分で顔面の温度が0.3-0.5℃上昇し, 更に5分後に刺激部位に相当する臓器に近い体表温度が0.3-0.6℃の上昇がサーモグラフィー装置で観測され臓器の血流増加が示唆された。この様な局所血流の増加は副交感神経を活性化し, 全身の血流改善に伴う全身状態の改善が期待できる
引用:足裏のツボ刺激による特定臓器の血流増加 サーモグラフィー温度画像による体表温度の確認
マッサージの内容は,研究者が施行した15分間の足裏マッサージであった。測定項目は,自律神経としてHF(副交感神経成分)とLF/(HF+LF)(交感神経成分),腸音,皮膚温であった。分析方法は各測定区間間と2群間でフリードマン検定とウィルコクスン符号付順位和検定を行った。結果,HFではマッサージ後3区間目に介入群が対照群より高く(p=0.051),LF/(HF+LF)では両群で差は認めなかった。腸音では介入群においてマッサージ前と比べマッサージ後に有意な増加があり(p<0.0125),2群の比較ではマッサージ後1〜3区間において介入群が対照群よりも高く有意差があった(p<0.05)。皮膚温では,介入群においてマッサージ中に低下し,マッサージ後上昇した。以上より,足裏マッサージには,リラックス効果,腸音の増加に伴う排便促進効果があることが考えられた。
引用:女性への足裏マッサージによる腸音解析からみた排便促通効果の検証
被験者22名に対して足底のツボを指圧することにより, 自律神経活動と脳波がどのように変化するのかを検討した. 自律神経活動を解析した結果により, 指圧中に交感神経の活動レベルが増加する被験者群(Sym-G)と副交感神経活動の活動レベルが増加する被験者群(Para-G)に分けて検討した. 指圧時には両群ともに脈波伝播時間は遅くなり, 心拍数は減少した. 脳波のα1帯域(8〜10Hz)パワーに関しては, Sym-Gで右足指圧時に増加したが, Para-Gではあまり変化が見られなかった. また脳波のα2帯域(10〜13Hz)パワーに関しては両群ともに同じような傾向が見られた.
まだまだ医学的根拠にするには、被験者数が少ないです。しかし、計測機器の進歩により、足ツボの科学的根拠として、なにかしたらの影響をあたえると考えてよさそうです。
ただ履くだけでもOK!? 足ツボマッサージグッズ
まずは、足ツボの科学的根拠でも紹介した、「足ツボプリント靴下の開発」と同じような足ツボがプリントされた靴下です。
楽天市場>>足の反射区ツボ押し靴下セット 日本語対照図つき
足ツボの反射区チャートをみながら施術もよいでしょうが、靴下になればいつでもどこでも足ツボができますね。
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足の甲のツボをほぐす靴下タイプのグッズです。履いているだけでいいのが便利そうです。
楽天市場>>ソールストレッチバンド
履いているだけで足裏への刺激やストレッチになります。
足指を広げる作用もあるので、外反母趾が気になるかたもいいですね。
足の甲のツボ・足裏のツボまとめ
足ツボは、鍼灸師がイメージすると経穴。一般的なかたの足ツボは、反射区と呼ばれるツボでした。
ツボ自体はズレていても問題ありません。押して気持ちいい・押して痛気持ちいい場所のほうが効果があります。
ツボの位置は、あくまでも目安と思ってください。
足ツボも体調に合わせておこないましょう。飲酒したときや、体調が悪すぎる場合は注意が必要です。
まだまだ科学的根拠が少ない足の甲のツボや足裏のツボですが、計測機器の発達でだんだんわかってきました。
ツボの効果としては、クールダウン(清熱)効果が高いので、イライラストレスが多いときはぜひ足ツボを試してみましょう。