情志憂鬱により気機が鬱滞しておこる病証を鬱証という.
鬱症には.抑鬱.情緒不安定,胸脇苦満.疼痛.または怒りっぽい,よく泣く.喉の梗塞感,不眠などの複雑な症状が現れる。
気機が鬱滞しそれが長期にわたって改善しないと、病は気から血におよび、そのために多くの病変に変化する可能性がある.
明代には鬱症を気鬱.血鬱,痰鬱,湿鬱.食鬱に分類している.これらは気鬱が基礎にあり.それが変化しておこるものとされている。
神経症.ヒステリーおよび更年期抑鬱症などは.
本病証の弁証論治を参考にしながら治療することができる。
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東洋医学からみた「うつ病」分類:実証
【1】肝気鬱結による鬱症
情志の失調により肝の条達が悪くなり,そのために肝気鬱滞となり気滞の状態が改善されないと鬱症がおこる。また気滞血瘀となり.そのために鬱証がおこるものもある.
【2】気鬱化火による鬱証
肝気鬱結の状態が長期にわたって改善されないと化火することがあり,それにより鬱証がおこるものもある。この場合には、特徴として肝火による症状を伴う.
【3】気滞痰鬱による鬱症
肝鬱乗脾.または過度の思慮,労倦により脾を損傷し.脾の運化機能が悪くなって痰湿を形成し.そのために気滞痰鬱となると鬱証がおこる.
東洋医学からみた「うつ病」分類:虚証
(1)心神失養による鬱証
憂慮などにより心気,営血を損傷すると心神失養となり、そのために心神不安になるとこのタイプの鬱証がおこる.
(2)心脾両虚による鬱証
過度の心労や思慮,久鬱により脾を損傷し、そのために気血の生成が悪くなり、心神失養になると,このタイプの鬱症がおこる.
(3)陰虚火旺による鬱証
長期にわたって気滞の状態が改善されないために化火し、それにより陰血を損傷すると,病は肝腎に波及し、陰虚火旺による鬱症がおこる.
東洋医学からみた「うつ病」鑑別:実証
【1】肝気鬱結による鬱証
主症:精神抑鬱,情緒不安,よく溜め息をつく
随伴症:胸脇脹満,疼痛部位は一定しない,胃脘部のつかえ,食欲不振,暖気,腹脹,あるいは嘔吐,大便失調,閉経
舌脈象:舌苔薄膩,脈弦
証候分析:
①精神抑鬱、情緒不安・・・情志失調により肝の粂達が悪くなるとおこる。
②胸脇脹満,腹脹.閉経・・・足厥陰肝経は少腹部を巡行し,胃を挟み,胸脇部に流注しているので.肝気鬱滞して気機が悪くなり、そのために肝絡失和になるとおこる。
③胃脘部のつかえ.噯気.食欲不振.嘔吐・・・肝気犯胃となり,胃の和降が悪くなるとおこる。
④腹脹,大使失調・・・肝気乗脾になるとおこる。
⑤舌苔薄膩.脈弦・・・肝胃不和の象である.
【2】気鬱化火による鬱証
主証:いらいらする,怒りっぽい
随伴症:胸脇脹満,呑酸,口乾,口苦.大便秘結,または頭痛,目赤.耳鳴り
舌脈象:舌質紅,舌苔黄.脈弦数
証侯分析:①頭痛,目赤,耳鳴り・・・気鬱化火になると火には炎上性があるため,火が足厥陰肝経の経脈にそって上行することによりおこる。
②口乾,口苦,大使秘結・・・肝火犯胃により胃腸に熱が生じるとおこる。
③いらいらする.怒りっぽい.舌質紅‘舌苔黄,脈弦数・・・すべて肝火による象である.
【3】気滞痰鬱による鬱証
主症:喉の異物感,または梗塞感
随伴症:胸悶,胸部の息づまり感,または胸脇を伴う
舌脈象:舌苔白膩、脈弦滑
証候分析:
①喉の異物感,梗塞盛・・・肝鬱乗脾により脾の運化機能が悪くなり、そのために痰湿を形成し、それが気滞とともに胸膈の上部に痰気鬱血するとおこる。これは「梅核気」といわれている。
②息づまり感・・・気がのびやかに動かないとおこる。
③脇痛・・・脇部は足厥陰肝経が流注しているので、その経絡が鬱滞すると脇痛がおこる.
④舌苔白膩,脈弦滑・・・肝鬱に痰湿がからんでいる象である.
東洋医学からみた「うつ病」鑑別虚証
【1】心神失養による鬱症
主症:精神不振,情緒が激動しやすい,悲しんだり泣いたりする
随伴症:煩悶する,時々あくびをする.不眠
舌脈象:舌質淡,舌苔薄白.脈弦細
症候分析:
①精神不振,精神恍惚,情緒が激動しやすい,悲しんだり泣いたりする・・・心気を損傷し営血が不足すると心神をうまく養うことができなくなりおこる。これを「金匱要略」で述べている「臓燥」に該当する.
②舌質淡.舌苔薄白,脈弦・・・気滞血虚の象である。
【2】心脾両虚による鬱症
主症:よくくよくよする,臆病になる
随伴症:心悸.不眠、健忘、頭暈、顔色がさえない,食欲不振
舌脈象:舌質淡,脈細弱
症候分析:
①心悸,臆病になる.不眠、健忘・・・心労,過度の思慮により心脾を損傷し,そのために心神失養になるとおこる.
②食欲不振・・・脾の運化機能が低下するとおこる.
③顔色がさえない,頭暈、舌質淡,脈細弱・・・気血両虚の象である.
【3】陰虚火旺による鬱証
主症:眩暈.心悸,不眠、心煩,怒りっぽい
随伴症:腰や膝がだるい,遺精,月経不順
舌脈象:舌貿紅,脈弦細数
症候分析:
①眩暈,怒りっぽい・・・臓陰不足、営血不足のために虚陽が上浮するとおこる.
②心悸.不眠.煩躁・・・陰血不足のために心神失養となったり,陰虚のために虚熱が生じ、それが心神に影響するとおこる.
③腰のだるさ・・・腎陰不足によりおこる。
④遺精、月経不順・・・陰虚火旺により精室に影響し、精関不固になると遺精がおこる。肝腎が失調し、衝任失調となると月経不順がおこる。
⑤舌質紅.脈弦細数・・・陰虚による虚熱の象である。